|
その世界は、そこに存在する数多くの国々の中の一つ、クロアータ帝国の共通語では<ヌートゥ>と呼ばれている。 ヌートゥで最大の陸地は、ファントルガル大陸だ。前述したクロアータ帝国は、その大陸の東縁に位置している。大陸最東端の港町ハホムーレから最短ルートで無難に航海できれば、約二十日間で到着できる。 クロアータというのはやはりその共通語で、<下弦の月>という意味だ。帝国は大きな七つの島々と、中小二十二の島々から成立している。その全体の形が夜空に輝くその月の形に似ていることから、そういう国名になったのだ。 帝国は今年で、建国二千五百二十二年目を迎えている。 それ以前は、帝国のある島々は、イシュアルハン列島と呼ばれていた。 その列島全土を建国以来支配しているのが、皇族であるラ=スタヴァチェ家の者達だ。 建国神話によれば、後に初代皇帝となるラ=スタヴァチェ家出身の少年が、当時迫害を受けつつもかなりの信者数があり、彼もその信者の一人だった、多神教である<スーヤ教>の神々から、とある啓示を受けた。 その啓示とは、当時世界のほとんどを支配し、少年の故郷のイシュアルハン列島もその支配下に置いていた、シェダリクイシ帝国の勢力を、列島から一掃せよ、というものだった。 彼は同じような啓示を受けた五人の人物と出会い、彼らを仲間として、列島からシェダリクイシ帝国の勢力を撤退させた。 その後、彼はやはりその神々の啓示により初代皇帝となり、その後その地位は、彼の直系の子女達により、現在まで受け継がれることになった。 一方、五人の仲間たちは、この国では大公よりも上位とされる<五色の聖騎士>の地位が神々より与えられた。 しかし、その地位は非世襲制だった。 その代々の地位に就く者は、代々帝位に就いている者と、数名の上位神官達の間に伝えられている儀式と呪文によって、いずこからともなくその儀式の場に召喚されるのだ。 その儀式は、常に臣民達に公開され、彼らはそのたびごとに、神の奇跡というものを目の辺りにすることになる。 この帝国の首都はベフルという。人口約二百十万で、その世界では第三位の人口の多さだ。 人口の多さは第三位だが、都市の美しさでは世界一との自信と誇りが、帝国の住民達にはある。 そしてそのことは世界中のほとんどの住人達にも認められ、彼らの憧憬の的になっていた。 帝位につく者たちが住まう宮殿ハルドウイッチムス城は、豪華絢爛な創りの、五芒星形型の宮殿だ。 その星の角の各頂点には、正門が設けられている─それらは<白の門><赤の門><黄の門><青の門><黒の門>と名づけられ、その門の傍らには五色の聖騎士たちの、宮殿よりその規模は小さいものの、やはり五芒星形型の館が建てられていた。そしてその館にも、五つの正門に冠せられている色名と同色の名前が冠せられていた。 そして、物語のとりあえずの舞台は、その中の<白の館>である。 また、やはりとりあえずの主人公は、シシカ=ギュアナントラウスという名前の少年だ。 彼は次期<白の聖騎士>としてこの世界に赤ん坊の時に召喚させられた。 そして、当代の<白の聖騎士>である養父・ゴルド=エンカーラウズバルグと彼の家族に囲まれ、そして、シシカ自身の仲間たちと共に、現在修行中の身である。 さて、彼がこれから体験することを、次ページから語り始めよう。 |
| SEO | [PR] 花 ローン比較 再就職支援 バレンタイン | 無料レンタルサーバー SEO | |