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 (3)
 さて、ここで少し時間を、真朝がさらわれた時まで戻そうと思う。
 「風の精霊に聞くの?」
夕真が尋ねた。小説を読んだり、ゲームをしたりして、風の精霊が何なのか、は知っている。
 この世界の風の精霊も、風を吹かせたり、音を運んだりする役割を負っている。他の精霊に比べると格段に自由に空を飛べて移動出来、しかも見たり聞いたり、おしゃべりが大好きだったりするので、精霊使いが情報を知りたい時には、実に便利な精霊なのだ。加えて水の精霊と同様にかなり素直なので、こちらが知りたいことを、精霊に「この情報はしゃべらないように」と魔法で呪縛がかけられていなければ、確実に教えてくれる。精霊は人間とは、良かれ悪しかれ、善悪の価値観が異なるのだった。
 ルイとミナが、夕真のその声の調子を聞き、そして、彼の今にも泣き出しそうな表情を見、
(こりゃまずいかな)
という気持ちとともに、思わず顔を見合わせる。
 それとほぼ同時に、夕真が自分のイライラと不満と不安を、いっせいにぶちまけた。
「ねえ、お姉ちゃんと僕、本当に元の世界に戻れるの?そりゃ確かに、噂を試した僕たちも悪いけどさ。今まで元の世界に帰れる、帰れるって思って旅してたけど、ほんとに帰れるってわけじゃないし、この世界にずっとこのままいることになるかもしれないし…。
 でも元の世界に帰る時は、お姉ちゃんも一緒だからね!僕だけだったら絶対向こうに帰らない!帰れるかどうかもわかんないけど…。
 向こうの世界に帰ったら、パパとママにもすぐ会うし、テレビも見たいしゲームもしたいし、それからサッカーもする!
 絶対向こうに帰る!帰る!」
夕真が顔を真っ赤にしてまるで小さな子のように地団駄を踏んで暴れまくり、最後には「帰る!帰る!」は聞き取れるが、他は何を言ってるかどうかも良くわからない状態になった。加えて、道にひっくり返って叫び続けている。
 ルイたちには、もともと、サッカーとか、テレビとかいう言葉も、なんのことだか、さっぱりわからないのだが、まあ、夕真たちが住んでいる世界にある、何か夕真たちのお気に入りのものだろう、というのは理解できた。
 「…こりゃまいったな」
ニングルとユーマが、ほとほと困り果てたように顔を見合わせる。二人はこういう風に子供がなると、ほぼお手上げ状態だった。それは、ルイもほぼ同様だ。
 「まあ、こんな見ず知らずの世界にいきなり放り込まれて、元の世界に帰れるかどうかもわからない状態で馴れない生活をした挙句、お姉ちゃんとも離れ離れになっちゃったしね。こうなってもおかしくはないわよ。むしろ、今まで我慢してきたほうじゃない?」
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