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 (魔法使いの素質を持った子は、やはり少ないな)
教室でそれぞれ自分の机に座っている子供たちを見た瞬間、ラディオスの思ったことはそれだった。
 ただ次の瞬間には、自分がそう思ったことの中に、魔法を扱えない人々に対する嘲笑めいた気分がやや混ざっていたことに気づき、強い自己嫌悪と共にその気持ちを打ち消した。
 しかし客観的に見れば、魔法を扱える者たちが扱えない普通の人々を見るとき、多少の蔑視が混ざっていても無理は無いかもしれないが。
 魔法を使えば、姿を消すこともできる、物を手も触れずに壊したり、動かしたりすることも出来る。魔法を極めれば、空を自由自在に飛ぶことも出来るし、瞬間移動をすることも出来るのだ。それに比べて、魔法を扱えない人々は、全て自分の力だけでやるしかない。その方法は、魔法使いたちから見ると、非常に非効率的に見える。
 ただそうした魔法使いの不可能を可能とする力とおごりが、今日の普通の人々が、憧れもするし、少なからず魔法使いに抱いている、反感を生んだことも確かだった。それは忘れてはならない。
 歴史を紐解いてみてもそれはわかる。
 約三千年前、ヌートゥの世界はある一つの強大な帝国が支配していた。
 その帝国の名前は、彼らの言葉で、<偉大なるシェダー>という意味になる<シェダリクイシ帝国>というものだった。
 かの国の人々はもともとは、ヌートゥで最大の大陸・ファントルガルの東部の一部分に位置した、ディーユアルン王国という国の山岳地帯に住んでいた少数民族の末裔だった。
 それがこの民族には、力のある魔法使いが多く生まれる、という特色があり、彼らは長い年月のうちにその力を蓄え、自分たちがその国に覇を唱えようと、反旗を翻したのだった。
 その時代、魔法使いは現在よりも数が少なく、魔法を扱える者たちは異端者として冷遇されていた。それをその民族はその立場を逆転させ、魔法使いが全権を握る世界を築こうとしたのだ。
 その考えに多くの魔法使いたちが賛同し、彼らは瞬く間に王国を支配した。
 そして、彼らのその当時の支配者だった女族長・シェダーの名をとった、シェダリクイシ帝国が誕生した。
 女帝となったシェダーの最期は、実は諸説紛々として確かではない。栄耀栄華を極めて至福のうちに死んだという説もあるし、いや、最期には家臣団と意見の対立があり、彼らの策謀により殺された、という説もある。
 いずれにしても三千年も昔のことで、真相は確かめられないが。
 そして最終的にヌートゥの世界に一大帝国を築いた彼らはさらにその気分を増長させ、魔法使いでなければ人ではない、というような態度をとるようになった。
 それがより、普通の人々が魔法使いに対する反感を強めたのだ、とラディオスは思い、強く頷いた。
 そして、帝国はそこから徐々に崩壊をし始め、そしてシェダリクイシ帝国の名は消え去った。
 その帝国の崩壊には、ほかでもないこのクロアータ帝国の初代皇帝と五色の聖騎士たちが深く関わっているのだが、ここではまだ述べない。機会があれば、その時に説明しようと思う。
 ただ、シェダリクイシ帝国は、完全に消え去ったわけではなかった。当時の皇帝の四番目の弟が温厚で誠実な人柄で、当時の五色の聖騎士たちの一人と幼いころから親しく、その聖騎士のたっての願いで、彼の助命を申し出たのだ。
 民衆にも人気のあった彼は、その助命でシェダリクイシ帝国の皇族の中で唯一の生存者となり、かつてディーユアルン王国だった地にまで帝国の版図を縮め、そこに新たな王国を築いた。
 その王国はかの国の言葉で<再生>を意味するブィリウンダ王国と名づけられ、実はリザディの母親─当代皇帝の皇后─は、ブィリンダ王国当代の王の第一王女だった。
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